Bruno Walter: Porta dell'Eternità というワルターの評伝本(イタリア語)
をご存知でしょうか。1999年から2001年にかけて全3巻で出版された限定本で、
各巻ともA4版上質紙で450ページ程度、珍しい写真や図版が満載の豪華本です。
出版当時はファンの間で注目されましたが、何分高価でしかも通常の書店流通
ルートには乗らなかったこと、内容的にワルター一人の評伝というより、20世
紀ヨーロッパの音楽を中心とする歴史文化論のような(一言でいえば寄り道的
な)部分が多く、そのためか英語などへの翻訳が出なかったこともあり、急速
に忘れ去られているような状況です。
このワルターの評伝本の再版が今年2月に原本とは別の出版社から発売され、
アマゾンなどで入手可能であるのを発見しました。原本が全3巻、総計1350ペ
ージ程度であるのに対し、再販本は全1巻で650ページ、違いが大きいので出版
元に原本との相違点などを質問したのですが、返答をもらえかったので実際に
注文して確かめてみました。書籍価格は40ユーロ前後ですが、日本への送料が
かなりかかります。注文後3週間弱で届きました。本を手にして思ったのは、
至って普通のソフトカバーの洋書という第一印象です。原本が重いA4版である
のに対しこちらは軽量で半分のA5版、原本の売りであった写真や図版はバッサ
リとカットされています。本文の内容面では、基本的な章構成は元通りながら、
短縮化のためか原本の多くの2章が1章に統合されています。大幅カットされ
た写真は、統合化後の1章につき1ページあるかないか程度ですが、原本には
ない写真も含まれています。その他原本にない内容としては、再版、というよ
り短縮改訂版の編者(A.ナーヴァ)の巻頭言、著者(M.セルヴィーニ)の素材
を用いて編者により新たに起草された「永遠の遺産」という追加の1章、それ
に音楽雑誌MUSICAに掲載された編集長(U.マジーニ)による著者の回想記が含
まれます。なおこの改訂版で初めて、著者のセルヴィーニが2006年に長い闘病
生活の末亡くなっていたことを知りました。心よりご冥福をお祈りします。